10月18日(金)は、水曜日のカンパネラの音楽担当やサウンドプロデューサー、DJなどと幅広く活動するケンモチヒデフミさんが登場しました。ケンモチさんは、東京・虎ノ門ヒルズステーションタワー内「TOKYO NODE」で11月1日(金)〜12月27日(金)開催の没入型音楽体験ミュージアム「MUUUSE(ミューズ): MUSIC MUSEUM」にて体験できる音楽生成プロジェクト「木曜日のカンパネラ」を、番組ナビゲーターの川田十夢さん(AR三兄弟)とともに手掛けています。これは、AIの力を駆使し「1日だけ先の未来を生きる」をコンセプトに水曜日のカンパネラの世界観を拡張するプロジェクト。そこで今回の放送では、音楽におけるAI活用や、「木曜日のカンパネラ」プロジェクトの舞台裏を川田さんと語りました。▼目次AI活用における人間の強み川田さんはこの「木曜日のカンパネラ」で、まずは水曜日のカンパネラの楽曲「モヤイ」を拡張した「ナスカ」という楽曲をAIを駆使し制作。ケンモチさんはその音源を聴いた時の印象を「出来が良すぎて若干の恐怖を覚えました」と振り返ります。特に生成された「ナスカ」の歌詞内の「ナスカ なすがまま」というフレーズがいいと思ったそうで、トークでも歌詞における「ダジャレ」についての話題が。「この辺の言葉のセンスは川田さんが作られてますよね?そこが一番恐怖を感じたところかもしれない」というケンモチさん。「ダジャレって、AIだとまだなかなか作れないんですかね。」これに対し、水曜日のカンパネラの歌詞などで「ケンモチさんの妙」を「僕なりに、人間的に学習」したという川田さんは、「形態素解析という概念でAIが言葉を切っちゃうんですよ。(AIでは)『ナスカ』と『なすがまま』は隣り合っていないんですよね。言葉の引き出しにおいてはすごい遠くにある言葉」「それを意識して学習やチューニングをするとまた変わるかもしれないけど、今のところ(ダジャレは)人間の特権ですね」と技術面から見た「ダジャレ」に対するAIの弱点を解説しました。また、ワーディングには人間のセンスが問われる一方、ケンモチさんは「言葉と音のはめ方として、人間だと多分使わないだろうなというジャッジの仕方が面白いなと思いました」と、「AIの妙」についても言及しました。この曲をケンモチさんに送ったあと、川田さんはさらに連続して3曲生成して送るもダメ出しを受けたそうです。ケンモチさんは「ナスカがあまりに出来がよかったんで、もっといけるんじゃないか」という思いだったそう。その時「ケンモチさんが仰ってたのは、『K-POPっぽい』っていうね」と川田さん。ケンモチさんは「ああそうですね…実はそれは、その3曲だけでなく全曲そういう印象を受けはしたんですけど……」と振り返りながら、「言葉の量が多い歌詞に対して、メロディーを、綺麗にかっこよくはめようとするとK-POPっぽくなっていくんだな…、という知見が得られましたね」と語りました。すると「これがケンモチさんの作家としての勘所だなと思って」と川田さん。「一応全部(AIへの)プロンプトはジャンルを変えたんですよ。トラップとか、ディープハウスとか、メランコリックとか。一言もK-POPとは入れてないんだけど、多分、世間で流れてるK-POPの傾向が、いろんな音楽を取り込んで言葉をばっと入れるってことだから(K-POPのようになったのでは)」と分析しました。「今のうちにAIに味方になってもらう」方が建設的ケンモチさんの手がける歌詞の特徴についてもトーク。「言語として、連続的に出てくるはずない言葉が急に出てきたり、“ずらし”ですよね」と、「エジソン」と「自尊心」が出てくる水曜日のカンパネラの楽曲「エジソン」を例に挙げながらその世界観に触れた川田さん。さらに、数年前のある番組でケンモチさんが「ラップ部分はAIに任せたい」と言っていた点に触れ、現在のAIの進化を踏まえ「任せられそうですか」とケンモチさんに訊ねます。「ラップの部分は未だに難しいなと思っているんですよね。韻を踏ませるのがとにかく難しくて、面白いことを何か考えてくださいというのも発想はできるんですけど、それをちゃんと言葉に落とし込んで、うまく韻を踏まえてラップさせるというのが未だにちょっとできないところはありますね」と感じているそう。「多分AIが、自分自身が何を面白いと思ってるかを自覚していないんですよね。意識がないんです。だからチューニングしても無理ですよね」と川田さんが話すと、ケンモチさんも「人間がそれぞれ笑うポイントも違うじゃないですか。面白さのひっかけスイッチみたいのがそれぞれあるから、やっぱりAIで成り立ちづらいんですかね」と続けた。川田さんが、「逆にAIじゃできないことは何だろう?ということから作家性を高める時代かなと思います」と話すと、「ちゃんとした綺麗な歌詞とか、毒にも薬にもならないような、どこかで聴いたことあるけど嫌な感じはしないな、という歌詞は結構今(AIも)書けちゃう気がしますよね」とケンモチさん。川田さんもAIはそういうのは得意でしょうね、と頷きました。一方で川田さんは「AIのテクノロジーがあることで、ケンモチさんとこういう会話ができたことは嬉しかったですね」「(音楽を)作ることに関しては同じテーブルにいたわけですから。それってあまり体験できないですよね」と今回の取り組みについての思いも語りました。ケンモチさんも、「音楽をAIで作るのはなしとか、AIというものは存在しませんということにはならないじゃないですか。なのでなるべく早い段階で味方に付いてもらって、『あ、ここまでできるんだ』とか、『あ、ここからは弱いんだ』というのをちゃんと知って、今のうちにAIに味方になってもらう方が多分建設的なんじゃないかなと」「音楽の進化とテクノロジーの進化ってずっと一緒に来ているものなので、否定するよりも受け入れていく方がこれからの時代にはいいのかな」と捉えているそうです。音楽制作で大事にしている「組み合わせの暴力」「Morisawa Fonts ROAD TO INNOVATION」では、ゲストに「自分自身の考えを自ら切り取る言葉」を訊ね、その言葉を、ゲストお気に入りのフォントとともに紹介しています。ケンモチさんが自身を切り取った言葉は、「組み合わせの暴力」。「これは私が音楽を作る上で強みにしているところ、大事にしているところ」だそう。「他の人が食い合わせ悪いなと思ってやっていないことをそのままポンポンっとのっけて、料理として皿にのせて合わせて出しちゃう」という意味を込めた言葉だといいます。選んだフォントは、「明朝体ぽいものでかっこよく書くよりもポップで面白いかなと思って、選ばせていただきました」という「ラピスメルト」です。PODCAST配信中 | 川田十夢×ケンモチヒデフミ本記事の放送回をディレクターズカットでお聴きいただけます。%3Ciframe%20src%3D%22https%3A%2F%2Fplayer.sonicbowl.cloud%2Fepisode%2F6cf56329-2137-4219-8c0a-0f5d9827b79e%2F%22%20allow%3D%22autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20fullscreen%3B%20picture-in-picture%22%20height%3D%22240%22%20width%3D%22100%25%22%20style%3D%22border%3A0%22%3E%3C%2Fiframe%3E