11月22日の「Morisawa Fonts ROAD TO INNOVATION」では、長編劇映画デビュー作『HAPPYEND』が10月に公開となった、ニューヨークと東京をベースに映像作家、アーティスト、翻訳家として活動する空音央さんが登場しました。▼目次青春映画でもありSF映画でもある監督と脚本を担当した『HAPPYEND』について、「作るのに7年ぐらいかかったんですよ。だから日の目を見るとは思ってもいなかった。嬉しかったですね」と空音央さん。この映画のストーリーについて、「コウとユウタという幼馴染の男の子がいて、彼らは音楽、特にテクノが大好きで、夜な夜な学校に忍び込んで音楽研究部室と呼ばれている自分たちの遊び場みたいなところで音楽を流しているんです」「それが行われているのが近未来の日本で、来ると言われている地震がさらに危機感を帯びて、まさに今でも来そうな感じの状態。それを機に国だったり、彼らの学校の校長だったりが生徒たちの自由を奪っていくところから始まる友情物語」と解説されました。 「青春映画でもあるしSFでもある」という印象を抱いた番組ナビゲーターの川田十夢さん。「上手だなと思ったのが、カメラ自体にAIが搭載されていて、校則を破るとカメラが認識して減点されちゃうんですよね。その状況下においてわざとふざけるやつが出てきて職員室に呼ばれちゃうとか、未来を描いても『ああいうことあるだろうな』ということがちゃんとあって観やすかったです」と感じたそう。 作品の設定について、空音央さんは小説家 ウィリアム・ギブソン氏による『未来はすでに到来している』という言葉に触れました。「それをベースに、いろんな国で観察した未来的な要素を近未来の日本に集めてみた、みたいな設定で書いてみました」とのこと。空音央さんの青春時代は?川田さんは「(作品は)秘密基地を作る、みたいなニュアンスじゃないですか。ああいう思春期だったんですか?」と、空音央さん自身の思春期についても質問。「そこまで格好良くなかったです。大学時代や大学を卒業したあとはもうちょっとそういった遊びはしていましたけど、流石に高校ではわりといい子でした(笑)。でも、5人組でいつもつるむ、みたいなことは本当に高校時代(にあった)」と振り返る空音央さん。川田さんはこの作品を観て、「青春ってなんだろうなと改めて思いました」「当時はうまくいかなかったとも思うし、でもなんか全部わかった気持ちでいたけど」と思いを馳せたそう。これには空音央さんも「全部わかった気持ちなんですよね、それは本当に僕もそうでした。歳をとればとるほどわからなくなってくる」と共感。音楽のような映画さらに川田さんは「映画が音楽みたいなんですよ」と感想を続けます。「遠くからロングショットで撮っていると生徒間の話が聞こえない」「カメラが寄っていくと聞こえる」といったニュアンスが「クラブミュージックっぽい」と感じたそう。これには、「クラブの外でちょっとだけ音が漏れているってエモいですよね。それを感じ取ってくれているのは嬉しいかもしれない」と空音央さん。台湾ニューシネマに影響を受けた川田さんは「(空音央さんは)ノンフィクションも撮るしドキュメンタリーも撮るし、こういう映画撮り続けてくれるのかな?って思いました」と、空音央さんのこれからの映画作品への期待も語ります。「根幹はフィクション映画」という空音央さんは、「元々フィクション映画・劇映画が好きで映画をやり始めたので、『HAPPYEND』はどの映画よりも前に描き始めたんですよ」といいます。そのインスピレーションについて、「いろんなジャンルから借りている。不良映画と言われるジャンルだったり、典型的な三角関係のジャンルからも借りているし、SFからも借りているし」といいます。 そこで、川田さんはこの日の放送でのメッセージテーマ「好きな青春映画」にちなみ、「空さんが観てきた青春映画って何が浮かびますか」と質問。「一番影響を受けちゃっているのは、台湾ニューシネマ」と空音央さん。これは、「台湾の1980年代・1990年代ぐらいの映画のムーブメント」だそう。蔡明亮監督の『青春神話』、侯孝賢監督の『風櫃の少年』、エドワード・ヤン監督『牯嶺街少年殺人事件』といった作品を例に挙げました。 その台湾では、第44回「台北金馬映画祭」にてアジア映画の振興を図るために設立された「NETPAC賞」に選出され、その中でも若い批評家が選ぶ「アジア映画批評家協会推薦賞」に選ばれた空音央さん。他にも香港、フィリピン、タイといった様々な国・地域の映画祭を回り「特に若者に受け入れてもらっている感じがするので、それは本当に嬉しいですね」といいます。「自分たちの文脈」を「映画と重ね合わせて共感している」、「それぞれの文脈で映画を見てもらっている感じがしていますね」と各地での反響を受けての感想を語りました。自身を切り取った一言は「曖昧な気持ち」「Morisawa Fonts ROAD TO INNOVATION」では、ゲストに「自分自身の考えを自ら切り取る言葉」を訊ね、その言葉を、ゲストお気に入りのフォントとともに紹介しています。空音央さんが自身を切り取った言葉は「曖昧な気持ち」。選んだフォントは「太ゴB101」。「曖昧な気持ちがすごい大事だと思っているので。そのアンビエントな気持ちというのを」表現したといいます。「太ゴB101」を選ばれた理由は「曖昧な気持ちをフォントで表すのって本当に難しいと思っていたので、単純に好きなフォントを選んだ。これはすごく好きなフォントです」と語りました。「やっぱ音楽が宿ってる人だなって思うのは、曖昧ってファジーじゃないですか。ファジー、アンビエント…言われてみたら、曖昧ですね」と川田さんが印象を伝えると、「音楽的と言っていただけたのは本当に嬉しくて」と空音央さん。「映画って、非直接的というか、いろいろこねくり回して物語を作らなきゃいけないわけですよ。でも、その物語を作って得られる感情みたいなものを音楽は本当に直接受け取れるような感じがするので、もう本当に音楽は偉大だなと思うんですよね。だから音楽をよく映画の中に使うんです」と語りました。PODCAST | 川田十夢×空音央本記事の放送回をディレクターズカットでお聴きいただけます。%3Ciframe%20src%3D%22https%3A%2F%2Fplayer.sonicbowl.cloud%2Fepisode%2F43ee1c4c-30c3-4e95-8cc5-e99f130832fa%2F%22%20allow%3D%22autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20fullscreen%3B%20picture-in-picture%22%20height%3D%22240%22%20width%3D%22100%25%22%20style%3D%22border%3A0%22%3E%3C%2Fiframe%3E