2025年1月3日(金)は、日付の数字がすべて異なる形にレタリングされたカレンダーを毎年発行するグラフィック・デザイナー、鈴木哲生さんが登場しました。▼目次川田十夢さん絶賛 365日全て数字のデザインが異なるカレンダーナビゲーターの川田十夢さんは、文字のデザインにまつわるゲストとして「モリサワさんがスポンサーになってくれるという話を聞いたときから、この方をお迎えしたいと思っていました」と鈴木さんを紹介。鈴木さんのカレンダーは年々買いづらくなっているそうで、埼玉県立近代美術館まで買いに行ったエピソードも明かした川田さん。「素晴らしいカレンダーで、毎日違う字なんですよね。月別のカレンダーなんですけど、月によって全部違う文字で作られている」と自身もお気に入りのよう。まず鈴木さんにカレンダー制作のきっかけについて聞いてみると、「最初に作ったのは2012年だと思うんですけど、その頃僕はまだ大学生で、周りでZine(ジン)を作ったり顧客なしで自弁して作ってお金を儲けているという、小遣い稼ぎみたいなことをしている学生の友達が多くて、自分もそういう『元手タダでできるお金儲け』みたいなことに興味があって作ったんじゃなかったかなと思います」と振り返りました。Calendar 25 - 13 Years Anniversary Calendar Asset Management Edition© Tézzo SUZUKI 公式Webサイトより365日全て異なるデザインの数字 どのように書いている?「最初はストックもないから、365日分作らなきゃいけないわけですよね。(心は)折れなかったですか?」という川田さんに、「文字だけバーッと書くのは一番楽なので、大変ではないですね」という鈴木さん。「素材を仕入れて加工して売るんじゃなくて、仕入れがかからないものが、お金だけじゃなくて精神的にも一番儲かるので、僕が一番楽にできる作業で作られたものにしようと思って」とのこと。2025年バージョンは、他の仕事が多忙な毎日の中で制作されたそうで、「空いている時間に1を12個、2を12個…と書いて進められれば理想的なんですけど、大体時間切れになるので。10とか11ぐらいまでは書いたんですけど、無理だなと思って諦めました」と、「12年分のアーカイブ2592字から出来のいいレタリングを集めた13周年記念バージョン」となっています。フォントを作ることとレタリングすることの違い大学院ではフォントを作る勉強をしていたという鈴木さん。川田さんの「鈴木さんにとって、フォントというのはどういう存在ですか」という質問から、フォントを作ることとレタリングすることの違いについてもトーク。「カレンダーは全部手で書いていて、一つの数字の一スタイルがその数字しかないのでレタリング(にあたる)」という一方で「フォントというのは、一つのスタイルで全部の文字がある」と、「必要なスキルが全然違うんです」と説明されました。多摩美術大学グラフィックデザイン学科の非常勤講師も務める鈴木さんに、「フォントは、連続して並べられる前提のものであるってことですか?」と川田さんが聞くと、「そうですね、学生にもよく言うんですけど」「例えば二つの単語を組んだとき、例えばBeefとChickenと組んだときに、Cの方(チキン)にばかり細い字が集まっちゃって、ビーフの方に太い字が集まっちゃったりすると、どっちか選んでくださいというコミュニケーションをとるときに、ビーフが強調されてしまう。肉(を選ぶ)ぐらいなら別にいいんですけど、ブラックとホワイトとかで、太さのムラ・大きさのムラの差異が出てしまうと、コミュニケーション上大変なことになりますよね。だからそうならないように、(フォントは)どう並べ替えても同じ印象になることが本当に大事」「一つの文字を作っているときに、他の文字のことを考えて組まれている状態を思い浮かべながら作る」と解説しました。AIに対しての考え方非常勤講師として学生と向き合う中「デザインの領域で、今AIとの向き合い方はどういうふうに教えてらっしゃいますか」と質問。「僕が教えているのが1年後期と2年前期で、めちゃくちゃ基礎なんですよね。だから、学生の個性・スキル・技術があまり問題になるところじゃない。大学と高校の間みたいな感じの課題をやっているので、まだそういうことを考えなきゃいけないレベルにはいってない感じですかね」とのこと。ただ「これAI使いました」と言っている学生もいるよう。自身のAIとの向き合い方については「必要になったら使うかなと思っています」として、AIに対して感じている二つの課題を説明。「AIを使った場合、判例的には、かなりプロンプトを工夫してやっていても、その原著性・コピーライトが取れない可能性があるというのをどこかで読んだことがあって。ということで、(著作権上)ちょっと立場が弱くなるかもしれないよということが問題の一つ」「もう一つは、(AIの)使い方でめちゃくちゃ極めてる人はたくさんいるから、ちょろっと使ったぐらいじゃそんなにマーケットの中で競争力を持てないと思うので、自分が満足するぐらいならやってもいいと思うんですけど、それで食っていこうとしても、なかなか難しいとは思います」と語りました。自身を切り取ってもらうには「本編を聴いてください」「Morisawa Fonts ROAD TO INNOVATION」では、ゲストに「自分自身の考えを自ら切り取る言葉」を訊ね、その言葉を、ゲストお気に入りのフォントとともに紹介しています。鈴木さんは少し考えた後、「本編を聴いてください」と語り、自身を切り取る一言を「本編を聴く」としました。選んだフォントはゴシックMB101のレギュラー。その放送本編では、母校・東京芸術大学で学んだことに対する所感や、オランダの KABK デン・ハーグ王立美術アカデミーへの留学で変化したことなどについても明かしています。PODCAST | 川田十夢×鈴木哲生本記事の放送回をディレクターズカットでお聴きいただけます。%3Ciframe%20src%3D%22https%3A%2F%2Fplayer.sonicbowl.cloud%2Fepisode%2Fbba7f15f-f157-4acd-b861-21920c0f5613%2F%22%20allow%3D%22autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20fullscreen%3B%20picture-in-picture%22%20height%3D%22240%22%20width%3D%22100%25%22%20style%3D%22border%3A0%22%3E%3C%2Fiframe%3E