3月28日(金)は、現代社会を昭和30〜40年代のテイストで表現したアニメーションが話題、昨年大ヒットした楽曲 こっちのけんと「はいよろこんで」のミュージックビデオも手がけたアニメーター・かねひさ和哉さんが登場。2001年=平成生まれのかねひささんによる“昭和テイスト”の表現への想いやそのキャリアを掘り下げました。▼目次ライターからアニメーター川田さんは、アニメーターであるかねひささんが元々ライターとしてのキャリアを積んでいた点に注目。かねひささんはよく「美大出たんですか?」と聞かれるそうで「実は全くそういう畑の出身ではなくて、元々映像研究というか、アニメーションがたどってきた歴史みたいなものを探っていくところから活動が始まってるんです」と語ります。「幼稚園ぐらいの時から『ミッキーマウス』『ポパイ』『トムとジェリー』とかがすごい大好きで」とかねひささん。「『ポパイ』ってフライシャーですか?」という川田さんの質問から、数々の名作を手がけたフライシャー兄弟による表現について、「僕は1980年代に子供時代を過ごしたけど、日本のアニメを見ててもやっぱりフライシャーの表現が元にあるなというか、原点回帰するとその辺にいきますよね」(川田さん)「そうですね、手塚治虫先生もフライシャーをすごく好きでしたし、宮崎駿監督もフライシャーの『バッタ君町に行く』が好きだという話は有名な話ですし、僕も『道化師ココ』『ベティ・ブープ』『ポパイ』とかの作品が好きで、自分もこういうものを作ってみたいと小学生の頃は思っていたので、フライシャーの話が通じるのすごい嬉しいです」(かねひささん)とその功績についてトーク。さらに川田さんは「僕はコンピューターの方に行って、ARという世界でやっていくんですけど、基本はアニメーションのことをわかってないと(いけない)。ちょっとタメていくようなフレームレートの取り方はフライシャーが一番参考になりますよね」、かねひささんは「フライシャーはジャズとアニメーションの同期みたいなところでも、自分がミュージックビデオを作る上でかなり影響を受けてる側面はあるのかなと思いますね」と、それぞれの作品への影響を語りました。そして川田さんはライターからアニメーターへの「ギアが変わった」のはなぜか、という点についてもかねひささんに質問。するとかねひささんは「今でも自分の主軸、原点にあるのは歴史に対する関心。映像の歴史を調べていくにあたって、それと同時並行で絵を描くのも好きだったんです。ノートに漫画を描いたり、パソコンを使ってアニメーション作ってみたり、みたいなことは元々好きだったんですよね」とのこと。それらの関心が「合流」し、「昔のアニメーションがすごい好きで、絵を描くのも好きで。アニメーションで歴史を自分で再現することって面白いんじゃないか?」という発想に、2022年の春頃思い立ったといいます。平成カルチャーの影響も?2001年生まれのかねひささんに「2000年代のアニメって豊作でしょ?そういうものは興味あったんですか」と、川田さんは「昭和」を表現するかねひささんの「平成」カルチャーからの影響について質問。「ありました。YouTubeとかいわゆるインターネットがどんどん普及していく過渡期、それがやっぱり自分の活動の原点になっている。アニメーションってテレビだけ見ていると、リアルタイムのものしか追えないじゃないですか、あるいはビデオソフトを買うとか。でもインターネットが登場することによって、同時代的なものから外れたものも興味が出てくる」とかねひささんは振り返り、「でも2000年代のアニメーションとかバラエティーもすごい好きで見てましたし、インターネットミームに今でもちゃんと詳しい」「そういう同時代的なものと、昔のものも好きという両方の部分があったからこそ、今こういう活動をしてるのかなと思いますね」と作風につながった背景を解説。「(自身が描く)4コマ漫画でも、古典的な昭和30・40年代の大人漫画のスタイルで同じことをやっていたとしたら、それは単なる模造品の再生産でしかないので。そうじゃなくて、あの絵柄で現代社会を風刺する。現代の絵柄で描いてしまうとあまりにも自分たちに近距離すぎるものも、あの絵柄で描くことによって客観化されるというか、ちょっと俯瞰して見えるような効果を狙って、ああいうことをやっている」といいます。かねひさ和哉(@kane_hisa) さんのマンガ一覧 | ツイコミ(仮)昭和風の作品をどのように生み出すか続いての話題は、そんな昭和風の作風をどのように生み出しているかについて。「昭和は昭和の作り方があったじゃないですか。セル画なのか、紙なのか、描いて連続的に写真を撮って、それを連続的に動画にしていましたよね。現代のツールは使ってるんですか?」と川田さん。かねひささんは、「ほぼほぼフルデジタル制作なんですよ」とのこと。「去年話題になった『はいよろこんで』のミュージックビデオであったり、他のいろんなミュージックビデオ、コマーシャルも、基本的にはフィルムとかセル画を実際に使うことはほぼ皆無なんです。基本的にAfter Effects、CLIP STUDIO PAINTといったパソコンのソフトを使って、ペンタブレットで作画をして、それをAfter Effectsでフィルムっぽく、VHSっぽく処理していく」という、「完全にもう、令和じゃないとできない」手順だそう。%3Ciframe%20width%3D%22800%22%20height%3D%22450%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2Fjzi6RNVEOtA%3Fsi%3DtfQpE2d9_3powXIj%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%3B%20web-share%22%20referrerpolicy%3D%22strict-origin-when-cross-origin%22%20allowfullscreen%3D%22%22%3E%3C%2Fiframe%3E長く続いた「昭和」をどのように捉えるか製作手法に続いては、「昭和」の捉え方について。「これはくくる人が悪いんですけど、すぐ昭和ってくくるでしょう?」と川田さん。長期に渡った昭和をどう捉えて表現するか、という観点のトークです。「そうなんですよ!これね、ちょっと僕も複雑なんですよ。昭和ってそもそも64年あるわけですよ」とかねひささんも同意。「ちょっと前」までは「意図的に昭和というものを取り入れようとはしていた」そうですが、「最近はあまり時代的な区分によって自分の表現を形容することを避けたいなと思っていて」とのこと。「仮に僕の持っている作風みたいなものが昭和的だったとしても、実際にこの昭和30年代・40年代にあったものとは別物なわけですよ。なので、“かねひさ的な昭和の再構築”であって、それは必ずしもレトロ・昭和で形容できるものではないものでもある」と自身の作風を表現。過去のカルチャーの捉え方については、川田さんも「古いものは全部古いものが同じ引き出しに入っちゃう人…(ここでかねひささんが、いますねと同意)、過去の中にも現在に至るグラデーションが本当はあって、昭和も本当はすごい違うからね」と日頃の活動の中で感じることがあるよう。「そうなんですよね。1930年代、戦前期のいわゆる昭和モダニズム文化から、いわゆる焼け跡世代、戦後の文化、進駐軍とかのジャズ文化であったりとか、そういったものを経て1960年代の高度経済成長期、1970年代、1980年代といくわけなので。でも今昭和というと、もう本当にそれこそ『ALWAYS 三丁目の夕日』的な“昭和30年代・夕焼け商店街”みたいな世界観と、戦争の焼け跡の記憶と、バブル(景気)がごっちゃになった表層が生まれてしまうので。確かに、これはどうなんのだろうとはちょっと思うときはありますね」とかねひささん。放送ではさらにかねひささんについて、いつプロダクション化するか、ARをどう活用するかなど、川田さんがさまざまな角度で掘り下げていきました。 自身を切り取った一言は「歴史から歴史を作る」「Morisawa Fonts ROAD TO INNOVATION」では、ゲストに「自分自身の考えを自ら切り取る言葉」を訊ね、その言葉を、ゲストお気に入りのフォントとともに紹介しています。かねひささんが自身を切り取った言葉は「歴史から歴史を作る」。フォントは「石井ゴシック」です。「今ほぼアドリブで言いました」というこの言葉。「歴史が好きで、歴史をずっと追っていって、その歴史を見ながら何かを作るんだけど、それ自体が歴史の一部になっていくという過程に今いると思うので、少なくとも今の自分を形容するとすれば、そういう言葉が一番しっくりくるんじゃないかなと思いました」とその言葉に込めた想いを解説。かねひささんが選んだフォント「石井ゴシック」は、写真植字機の書体として長年親しまれてきたものをベースに、保有元である株式会社写研と、株式会社モリサワ、有限会社字游工房が共同開発し、Morisawa Fontsでの提供が実現した改刻フォントです。かねひささんは「やっとパソコンで石井ゴシックが使えるぞ!みたいな感じで、すごい喜んだ」と教えてくれました。PODCAST | 川田十夢×かねひさ和哉本記事の放送回をディレクターズカットでお聴きいただけます。%3Ciframe%20src%3D%22https%3A%2F%2Fplayer.sonicbowl.cloud%2Fepisode%2F82e75b02-a106-4990-9094-06e9963e2f35%2F%22%20allow%3D%22autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20fullscreen%3B%20picture-in-picture%22%20height%3D%22240%22%20width%3D%22100%25%22%20style%3D%22border%3A0%22%3E%3C%2Fiframe%3E