4月4日(金)は、医師であり元ストリートダンサーという自身の経験を元に「ダンス=身体=メディア論」を記した著書『踊るのは新しい体』が3月に刊行となった医師・批評家 太田充胤さんが登場。太田さんは、川田さんがナビゲーターを務めるラジオ番組を「THE HANGOUT」「INNOVATION WORLD」と聴き続けているリスナーであるという側面も。川田さんの影響を受けたという筆致や、身体表現への考え方・未来などについてトークを繰り広げました。▼目次川田十夢さんのラジオや著書からの影響『踊るのは新しい体』は、書籍の帯に記載された推薦文を番組ナビゲーター・川田十夢さんが提供しています。「単にリスナーであるという一方的な関係だけで、帯文を書いていただくという依頼を不躾にもお願いしまして、なんとご快諾をいただきまして。そしてこうやってラジオにも呼んでいただける。私にとって夢のような状況でございます」と太田さん。踊るのは新しい体 | フィルムアート社「川田さんの影響を多分に受けてできた」というこの本。太田さんは、川田さんのラジオのみならず著書『拡張現実的』についても「本棚のいいところに置いて、常に読み返しています」と語ります。川田さんも太田さんの筆致について「結構ラジオ的」という印象だそう。「口語だと伝えやすいけど、文章だとちょっと難しいことっていっぱいあるじゃないですか。それをちゃんと口語的に書いていて」と表現します。太田さんは、川田さんの著書について「書かれていることのリズムや言葉遊びが、思考をドライブしていくみたいで気持ち良い」と感じ、今回の書籍でもそのような文章を目指したと振り返りました。『拡張現実的』(川田 十夢)|講談社身体表現を取り巻く課題身体表現について、「VTuberが現れたり、初音ミクの現象とか、いろんなテクノロジーが進化している一方で、それらについての批評周りがアップデートされていなかった」と感じていたという川田さん。その中で太田さんの書籍は「ちょうど欲しかった内容でした」と語ります。太田さんは、「僕は思春期とか多感な頃にニコニコ動画やYouTubeが出てきてという世代で、ダンスがネット上で流通すること、CGのモデルが画面の中で踊ること、そういったことが可能になり始めてきた。そういうときにちょうど真面目にダンスをやっていて」「そういうことを1冊ちゃんと本にしたら面白いんじゃないかというのが、(出版元の)フィルムアート社からいただいたご提案」だったと明かしました。川田さんは「僕は拡張現実を考えるときに、『半分は体だな』と思ってたんだけど、何を読んでいいかわからない、何から始めていいかわからなかった。けどこの本を読めば、そのポッカリ開いた穴が充足できました」と振り返り、さらに「ちゃんとテクノロジーの話をしている」点も良く、世間での身体表現を取り巻く批評については「現代の話をなんでしないの」と考えていたそう。太田さんも「ダンスの批評をする人たちは、TikTokとかニコニコ動画で踊ってみたとかやっているものに基本的にはあまり触れない。アカデミシャンは、それは多分業績にならないという(考え)のもある。だから私みたいな“野良でやってる人”たちがそういうところを広げて本にしないといけないという気持ちでやっております」と同じく課題感を感じていたようです。そんな川田さんが『踊るのは新しい体』の推薦文として寄せたのは「資産運用より大切なのは身体運用、株主優待より切実なのは幽体のダンス。本書から読み取ったメソッドの数々、とにかく変なことがたくさん書いてあります。」という文章。いくつかの候補から太田さんは「即決でした」とのことでした。テクノロジーにより身体表現はどう進化する?推薦文の他の候補として川田さんが出したのが、「もはやAIが進化し過ぎており、人間の肉体に求められるのはセンシングつまり反応速度だけである。暗雲立ち込める予測は、本書によりスカッと晴れた。未来は数奇だがまだ明るい。」というもの。こっちは選ばれなかったけどね、としつつ、川田さんはその文章の意図について「AIが進化してるけど、身体がおざなりになってますもんね」と太田さんに話します。太田さんも「身体、特に身体芸術、ダンスとか演劇とかって消えものなので(インターネットに)流通しないんですよね」と課題を感じているそう。それを受け川田さんは「これだけテクノロジーが進んでいるのに、舞台芸術だけは残っていないのはちょっと...戯曲を読んで頭の中で再現するのはちょっと違うなと思っていて」「技術者としては、空間芸術を空間ごと記録することを目標としている」と語ると、太田さんも「はい、いろんな記録とか流通の仕方があると思う。VRとか3Dカメラで撮ってそのまま見られるようにするのも一つだし、モーションをデータとして起こしていろんな形の体に流し込めるようにして流通するのもある。」「川田さんは過去の作品『バーチャル身体図鑑』(編注:小林幸子さんや元・たまの石川浩司さんなど、芸能・音楽分野の“人体データ”をアーカイブしたもの)でモーションをデータ化してパッケージ化することをされていたので、思想としてはそういったところに影響を受けてます」と川田さんの考え方に共鳴。VIRTUAL NIPPON BODIESバーチャル身体図鑑 | THEATRE for ALL川田さんも「消えものとされている身体の(動き)をデータ化して、それが願わくば売り物になることが人類にとって豊かなことなんじゃないかと思ってます」と目標を明かしました。その後も放送では身体表現についてさまざまな話題が飛び交い、終盤に川田さんが「動きって要するに電気でしょ。まとまった電気信号を、例えばジョギングのモーションデータをダウンロードしたら自分の身体で勝手に走ってくれるみたいな。ダンスだと『VRChat』上で行われているモーションデータをダウンロードしたらアバターを踊れるというのが自分の身体でできるようになる」「そういうことが、時間はかかるけどやがてできるだろうなと思って。そうなったらまた変わるよね」と身体表現の未来について語ると、太田さんも「いろんな人が自分の体で踊れなくても踊れる、ということが起こるようになるし、芸術を見るという体験のあり方が変わる。自分の身体で追体験するようなことができるようになったら面白いですよね」と応えました。自身を切り取った一言は「領域貫通型身体論」「Morisawa Fonts ROAD TO INNOVATION」では、ゲストに「自分自身の考えを自ら切り取る言葉」を訊ね、その言葉を、ゲストお気に入りのフォントとともに紹介しています。太田さんが自身を切り取った言葉は「領域貫通型身体論」。フォントは「ニブシブ」です。この言葉は、太田さんの「批評の師匠」であるという叙述家・佐々木敦さんが「よく『領域横断じゃなくて貫通なんだ』と言うんです。確かに私も何かそういう生き方をしてるなと思って」ということで、この言葉で自身を表現してくれました。選んだフォント「ニブシブ」については「ジャンプする前みたいな、バネのような状態」とその印象を語りました。PODCAST | 川田十夢×太田充胤本記事の放送回をディレクターズカットでお聴きいただけます。%3Ciframe%20src%3D%22https%3A%2F%2Fplayer.sonicbowl.cloud%2Fpodcast%2Fa3a3aca0-193d-494b-b446-e4f3b7adecea%2F%22%20allow%3D%22autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20fullscreen%3B%20picture-in-picture%22%20height%3D%22240%22%20width%3D%22100%25%22%20style%3D%22border%3A0%22%3E%3C%2Fiframe%3E