6月6日(金)は、6月1日付で真打に昇進した落語家・立川吉笑さんが登場。積極的に新たな表現に挑む吉笑さんの考え方を探りました。▼目次この10年間の変化放送時「真打の披露パーティー」を控えており、パーティーへの招待を通してさまざまな人と「またご縁がつながってありがたいです」と語る吉笑さん。しかし準備に多忙で、直近は「本当に事務作業しかしていなくて、落語のこととか、創造的な作業をしていないから、この25分ぐらいだけは久々に創造の風を浴びに来たので、もうお願いします」と番組ナビゲーターの川田十夢さんにお願いする一幕も。 10年前、当時川田さんが火曜ナビゲーターを務めていたJ-WAVE「THE HANGOUT」に出演したことがある吉笑さん。川田さんは当時、吉笑さんを「この人は才能の塊だ」と評していたことに触れ、「でも(吉笑さんは)『やめてくれ』『ハードル上がるだけじゃないですか』って当時言ってましたよね」と振り返ります。これには、真打となった今「現在は受け止めていきますからね」と笑いながら応える吉笑さんでした。 %3Ciframe%20width%3D%221280%22%20height%3D%22720%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2FkqUsf2741JA%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%22%20allowfullscreen%3E%3C%2Fiframe%3EJ-WAVE「THE HANGOUT」 「やっぱり真打はすごいですよね」という川田さんに、そうですね、と答えつつ、吉笑さんはここまでの変遷を語ります。「この5年ぐらいは特に、あえて落語の文脈の中で活動してきて。2015年のときは入門5年目とかで、何か新しい感じというか、自分はちょっと他の落語家さんと違うぞ、ということを推していたんですけど、それをやってちょっと評価されてきたら、『お前飛び道具だから、今落語家として目立ってんだ』みたいな意見を言われることが増えてきて、それだけじゃないつもりというのがあったので、一旦落語の真ん中でちゃんと評価されたいなと思ってこの5年ぐらいはやってきた」。その結果「落語家としての身体性はだいぶこの10年で増えたと思う」と振り返りました。落語は「無駄がないと駄目」川田さんは、当時、吉笑さんを「(マーク・)ザッカーバーグと同い年ですね」というワードで紹介していた点に触れます。一方吉笑さんは川田さんへの印象を、「そもそも落語がどう考えても拡張現実的だから、川田さんがやっていらっしゃることは気になるというか響くというか」と表現。 さらに川田さんは「吉笑さんのイベントに僕も呼んでもらったり、(放送作家の)倉本美津留さんがやっているイベントに僕も演者として出たりしたときに、吉笑さんは、若かったのもあるけど、僕に『ズルい!』『プロジェクターとか使ったらズルいですよ』って言ってましたね」というエピソードも披露。「やっぱりビジュアル、プロジェクター強いもんな…」と振り返る吉笑さんは、そこから自身の落語における表現方法の試行錯誤について語ります。 去年からプロジェクターを使った落語をやり始めたという吉笑さん。「元々落語家になる前にイクイプメンという2人組で活動していて、当時そういうスライドショーみたいな、コントに映像を足してみたいなことをしてたんです。」その一方で「落語家になったんだったら落語家らしいことをやる、というのを呪いみたいにずっと自問自答していた」とのこと。しかし「それがこの10年ぐらい経て、だいぶ何が落語か、みたいな定義が見えてきたというのがあって、今の自分だったら『映像を使っても落語だな』みたいなことができそうなタイミング」と振り返ります。 また、「落語って何だろう」という定義については「無駄。無駄がまずないと駄目で。ノイズがやっぱり多いんですよ。短時間で自分の切り口を提示するのが一番だとやっぱりコント的になっちゃうんです」と解説。 古典落語の入りも「コントだったら全部省く」「入ってくるだけのワンシーンで、そんなに別に面白くないやり取りを無駄にやるんですけど、でもそれで聞いている側もチューニングが合うというか、それを飛ばして一気に情報を出していったら、多分お客さんついてこられなくなるんですよ」ということを数年考えていたそう。縦型動画への挑戦吉笑さんのこの10年間の試みについて、「縦型の動画もやってましたよね」と川田さんが紹介すると、その試みについて吉笑さんは「正座している落語家の画角が縦型(動画)にぴったりだから、もうこんなに運命的なことないだろうと思ってやっていたけど、結局早々実装できなかったな…」「未だにやりたい」と振り返りました。 %3Ciframe%20width%3D%221280%22%20height%3D%22720%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2FydQjWf1y5bQ%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%22%20allowfullscreen%3E%3C%2Fiframe%3E 真打となり変わったことはそのほかにも、「飛脚」を題材に「擬古典」(古典落語的世界観の中で、現代的なコントやギャグ漫画に近い笑いの感覚を表現する手法)で表現することや、「時間」を題材にしようとするも、話を聞いた研究者の言葉からスランプになってしまったことなど、近年考えた落語の題材についてのトークも。吉笑さんは「何事にも過剰に反応するのがやっぱり芸人だから」と振り返ります。 真打となったことにより「何でも本格にしていきたいけど、本格すぎると超えられない大衆性がやっぱあって、難しいよね」と慮る川田さんに、「本格的な(真打という)看板だから、割とここから本当に崩していってもいいなっていうタイミングな気がします」と吉笑さん。 真打となり変わったことについて「わかりやすく言うと、もう自分で自分の責任を取れる」といい、「立川流というちょっと特殊な団体にいたので、やれることは(真打昇進前の)二ツ目のときから自由にやっていたんですけど、でもギリギリのところで『これをやったらちょっといろんな波風立ちそう』というのはセーブせざるを得なかった。やっぱり最終的に師匠に責任をとってもらうことになる、それは一番避けなければならないことなので。いよいよ自分の責任で」とこれからの展望を語ります。論理を落語で落とし込むそんな吉笑さんに、川田さんは落語で扱ってほしいおすすめの現代用語をいくつか推薦。川田さんが最近印象に残った漫画『住みにごり』作中の世界観にちなんだ「引きこもり」、「歳を取ってくるとだんだん感情の制御ができなくなって」という状態を表した「感情失禁」、「ふるさと納税」などを挙げ「現代の移り行くものを、何か(落語で)入れてくれると」と期待を寄せました。 そのトークを踏まえ吉笑さんは自身の好みについて「それ(現代の事象)をあたかも江戸時代に同じようなことがあったというようなところでリアリティを持って何かやるのが好き」といい、「この間思いついたのは…」と、倫理学でしばしば扱われる「トロッコ問題」を題材にした演目の案について明かします。「電車が走っていてそのまま進んだら5人が亡くなります、(そんな時)目の前に分岐点のレバーがあって、レバーをガチャってやったら電車が曲がって1人いなくなるけどもどうしますか、という問題」が「トロッコ問題」。 それを吉笑さんは「人が死ぬというマイナスの要素でトロッコ問題を作らなくても、このままだったら1人が喜びます、でも自分が何か作用したら5人が喜びますという何かプラスのトロッコ問題の方が幸せだ、みたいな。これだったら思いつきそうで、今やりたい」と「論理を落語で落とし込む」ことを目指しているそう。自身を切り取った言葉は「伝統芸能従事者」「Morisawa Fonts ROAD TO INNOVATION」では、ゲストに「自分自身の考えを自ら切り取る言葉」を訊ね、その言葉を、ゲストお気に入りのフォントとともに紹介しています。 吉笑さんが自身を切り取った言葉は「伝統芸能従事者」。フォントは「ちょっとポップなやつ」と「TBUD丸ゴシック」をセレクト。 「伝統芸能従事者だけど、何か見え方はちょっとポップでいたいみたいな感じ。真打だったら弟子が採れるので、伝統を繋ぐ立場でもある。でも重々しい感じではなく、ちょっとポップな感じでいきたい、みたいなことですかね」とその言葉とフォント選びに込めた思いを明かしました。 最後に直近のお知らせを聞かれると、真打昇進を記念し昨年リリースしたCD「立川吉笑 落語傑作選」がサブスクリプションサービスでも聴けることに触れた吉笑さん。「本当に定番の6席が入っていますので、『落語難しいな』と思っている方にこそ聴いてもらいたい。案外ポップカルチャーなので」と語りました。%3Ciframe%20style%3D%22border-radius%3A12px%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fopen.spotify.com%2Fembed%2Fartist%2F5qnPFvrjAflPcbCIBei12G%3Futm_source%3Dgenerator%22%20width%3D%22100%25%22%20height%3D%22352%22%20frameborder%3D%220%22%20allowfullscreen%3D%22%22%20allow%3D%22autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20fullscreen%3B%20picture-in-picture%22%20loading%3D%22lazy%22%3E%3C%2Fiframe%3EPODCAST | 川田十夢×立川吉笑本記事の放送回をディレクターズカットでお聴きいただけます。%3Ciframe%20style%3D%22border-radius%3A12px%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fopen.spotify.com%2Fembed%2Fepisode%2F5Gq2AAG0KluUhwznyR7xXq%3Futm_source%3Dgenerator%22%20width%3D%22100%25%22%20height%3D%22352%22%20frameborder%3D%220%22%20allowfullscreen%3D%22%22%20allow%3D%22autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20fullscreen%3B%20picture-in-picture%22%20loading%3D%22lazy%22%3E%3C%2Fiframe%3E