「開国以来」の日米の関係と野球の歴史批評誌「PLANETS」編集部、株式会社LIG広報を経て独立。その後編集者としてさまざまな書籍を手掛けていた中野さんは、「中高大と野球部出身」である一方で「もともと小学生のときとかはめちゃくちゃ文化系だった(中野さんご自身のnoteより)」というバックグラウンドが。これまでたくさんの野球に関連する本を読んできた中で「こういう切り口じゃないだろ」という不満があったそう。そこで執筆された『文化系のための野球入門』。番組ナビゲーター・川田十夢さんは「文化的な角度で野球を紹介してくれていて、例えば、明治から現代まで野球がどのように日本で発展してきたのかとか、あまりちゃんと知らなかったですね」と書籍での印象や気づきを語ります。中野さんは、日本における野球の発展について「開国以来」の日本とアメリカとの関係に触れ、「アメリカとの関係が、開国以来一貫して日本の国や国民のテーマではあったと思うんですけど、戦前は若干ストレートには憧れられなかったところが、戦後、敗戦を契機にアメリカはストレートに憧れる対象になった。それを象徴するのは野球」と解説。戦前は「野球は舶来のスポーツ。ちょっと抑圧された位置にあった」「柔道・剣道とか、武道の方がやっぱりプレゼンスが大きかったと思います」と推察します。アメリカ野球の自由な雰囲気はなぜ生まれる?続いて川田さんは、アメリカ野球での選手の様子などで見受けられる自由な雰囲気について「個性的で面白いじゃないですか。日本の野球とアメリカの野球は源流がちょっと違うんだろうなと思いますよね」と指摘。中野さんはその違いが生まれた背景として、アメリカでは野球が国技と認識され奨励されている一方で「戦前の日本や、特に戦時中は敵性スポーツになりましたし、やることにちょっと戸惑いがあるというか、抑制されるところがあって」と考察。さらに中野さんは戦争における日本軍を組織論から捉えた「すごく有名な本」である『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』に触れ、その書籍の中で「アメリカは結果にフォーカスする。日本はプロセス・過程にフォーカスする」という点が言及されており、野球でもそういう違いがあるのではと示唆。「例えば日本の野球はフォームをすごく気にするんです。アメリカは『打てれば何でもいいじゃん』みたいな感じで、結果がよければ(よい)」といいます。野球界の常識は「理由を知らないし、教えてもらえない」?2020年にコロナ禍により夏の甲子園(全国高等学校野球選手権大会)が中止となり、阪神甲子園球場と阪神タイガースが野球部員やマネージャーを励ますべく、日本高等学校野球連盟加盟の野球部と軟式・硬式女子野球部へ「甲子園の土」が入ったキーホルダーを贈ったところメルカリに多数出品されてしまったという事例についても言及。甲子園の土といえば高校球児が持ち帰るシーンも有名ですが、そのように甲子園の土を神聖なものとして捉えることや、「グローブに、メーカー名が派手な色は駄目とか規定がある」ような、伝統のもと野球界で続いてきたことに関して「理由を知らないし、教えてもらえないので、『何なんだろう?』って思っていると思います」と、この事例を通して、現代における感覚の変化について触れた中野さん。野球界の伝統は「歴史的な経緯でそうなっているんですけど、『歴史的な経緯って何やねん』っていう。みんな(若い世代はその経緯を)知らないんですよ」と、野球に携わる若い世代のマインドについて解説しました。日本で野球の価値を高めるには?さらに「今後の野球はどのように発展していくべきか」という点への中野さんの所感を聞くと、「外国人枠」についての言及が。日本のプロ野球とアメリカのメジャーリーグで選手の年俸格差がある中で、「日本からアメリカに行く選手が(今以上に)増えていくと思う。そうなったときにどうしたらいいかというと、日本プロ野球で、もうちょっとちゃんとお金を稼げるような仕組みを作る」と中野さん。日本のプロ野球で、出場選手登録において人数が制限されている「外国人枠」を「なくしたりもっと拡大したりして、いろんな国の人を呼んできて交流する。そういうことが、(野球の)社会としての価値にもなっていくかなと思います」と語りました。自身を切り取った言葉は「文武不岐」「Morisawa Fonts ROAD TO INNOVATION」では、ゲストに「自分自身の考えを自ら切り取る言葉」を訊ね、その言葉を、ゲストお気に入りのフォントとともに紹介しています。中野さんが自身を切り取った言葉は「文武不岐」。「文武不岐(ぶんぶふき)というのは日本スポーツの父・柔道の父である嘉納治五郎の言葉。人間の心と体を育てることは分けることはできないという意味。『文化系だから私は精神の方だけやる』だけじゃなくて、精神と身体の両方をちゃんと育てていくことが、その人にとっての幸せや、やりたいことに繋がっていくという意味と僕は解釈していて」とのこと。選んだフォントは「丸フォーク」。「文武不岐って四字熟語じゃないですか。例えばリュウミンとかすごくかっこいいフォントでもいいと思うんですけど、それだとちょっと和の空気が出過ぎるかなと。漢字って元々中国由来のものじゃないですか。中国や台湾って結構丸っぽいフォントが好きだったりとか、丸フォークは漢字の元となった甲骨文字のニュアンスも感じるので。丸っぽい感じがいいかな」とセレクトの意図を語りました。PODCAST | 川田十夢×中野慧本記事の放送回をディレクターズカットでお聴きいただけます。%3Ciframe%20style%3D%22border-radius%3A12px%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fopen.spotify.com%2Fembed%2Fepisode%2F04ZGebCVb2oxociCeSIf6z%3Futm_source%3Dgenerator%22%20width%3D%22100%25%22%20height%3D%22352%22%20frameborder%3D%220%22%20allowfullscreen%3D%22%22%20allow%3D%22autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20fullscreen%3B%20picture-in-picture%22%20loading%3D%22lazy%22%3E%3C%2Fiframe%3E